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病院新時代 29号

「地域における病診連携の新たなかたちの架け橋として

内視鏡センターの活用をめざす」

 

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 兵庫県宝塚市にある谷村外科胃腸科医院は、2001年に複合診療施設「宝塚メディカルスクウェア(TMS)」を設立し、医院の診療室のほかに画像診断センターや内視鏡センターを構えて生まれ変わった。リニューアルから6年、TMS内視鏡センターでの内視鏡検査実施件数はスタート時の2倍以上になり、現在は上部・下部消化管内視鏡検査を合わせて年間7,600件以上。無床診療所でありながら、同医院には近畿一円、遠くは関東からも多くの患者が訪れるという。 TMS内視鏡センターの理念や取り組みについて、同医院院長である谷村雅一先生に取材した。img

 

 

 

院長/谷村 雅一先生  

マイナスイメージを払拭し患者の満足度をアップ

 谷村外科胃腸科医院に内視鏡センターが併設されたのは、2001年1月だ。同医院で実施された上部・下部消化管内視鏡検査の、総件数の推移を見ると(【資料1】)、内視鏡センターが開設された2001年に3,304件であったものが2005年には6,652件と倍増。2006年には7,618件となっており、上限は年間5,000件とも言われている無床診療所の検査総件数の常識をあっさり覆している。

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 しかし、注目すべきはそれだけではない。【資料1】からは内視鏡センター開設以前より、検査総件数が著しく伸びていることが読みとれる。

 同医院で内視鏡検査が始まったのは1996年。現院長の谷村雅一先生が市中病院に勤務しながら、週2日、父が院長を務めていた同医院に通いながらのかたちでの実施だった。当初の検査総件数は年間195件と少なかったが、1998年に谷村氏が父の跡を継いで院長となり、年間を通して内視鏡検査が行われるようになると、年々驚くほどの割合で検査総件数が増加するようになったのだ。これだけ多くの患者が集まる背景のひとつには、谷村先生の内視鏡検査普及に対する一貫したポリシーがある。

「内視鏡検査は、『辛い』、『痛い』イメージがあるため、患者様からはできれば受けたくないと敬遠されがちです。けれども、たとえば消化管の早期がんに対して、精度の高い診断を可能とさせるのは内視鏡検査でしょう(【資料2】)。とても大切な検査で、マイナスイメージは払拭しなければならない。苦痛のない検査を実施して、より多くの方が積極的に内視鏡検査を受けてくださるよう努力をしてきました」

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 検査中の苦痛や疼痛を緩和する具体的な方法として、谷村先生は、欧米では一般的な意識下鎮静法を採用している。患者の意識がなくならない程度の鎮静を行ったうえで内視鏡を挿入する方法だ。これにより、患者の苦痛は緩和され、激しい嘔吐なども抑制されるので、検査の精度も向上するという。にもかかわらず、意識下鎮静法は静脈麻酔を使用するためリスクマネジメントや、リカバリーのためのスペースが必要になるなどの理由から、日本では無麻酔で患者に苦痛を強いたまま内視鏡検査を行う医療施設がいまだ少なくない。患者にとってどちらがいいかは明白だろう。

「当センターでは、事前に静脈麻酔や検査方法について十分に患者様に説明をし、納得を得たうえで検査に臨んでいただいています。内視鏡での逐年検査をしてこそ、早期がんの発見につながるのですから、継続して検査を受けていただかなければ、意味がありません。患者様の満足度を上げ、『またここで検査を受けたい』と思ってもらう、とにかく検査に対する拒否反応を抱かせないようにすることが大切だと考えています」

 「苦痛のない内視鏡検査」が、患者が集まる一因であるのは間違いない。患者の満足度の高さは、年間7,600件以上も行われている内視鏡検査のうちほぼ半数が同センターでの検査が2度目、3度目というリピーターで占められている事実からもうかがえる。

 患者間の口コミの威力も大きく「以前、別の病院で内視鏡検査を受けてとても辛い思いをしましたが、こちらなら大丈夫だと聞いて来ました」と言って来院する患者が、あとを絶たないようだ。

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情報のフィードバックで地域の医師の信頼を獲得

 内視鏡検査を受ける患者のほぼ半数がリピーターなら、当然だがほぼ半数は初めての患者。実はその大部分が地域の医師からの紹介患者だ。「内視鏡検査を始めた当初から徹底してきたのは、紹介医への速やかな情報提供とフィードバックです。紹介患者様からの予約を受けたら、まずその旨を紹介医にFAX。来院して検査が終わったら、その結果やコメントをただちにFAX。病理の結果が戻ってきたら、それもすぐに……」

 膨大な数の紹介患者について、そのつど、細かい報告やフィードバック、相談を行うのにたいへんな労力を要するのは想像に難くない。しかし、それらを継続することで、地道に地域の医師たちの信頼を得てきたからこそ、紹介患者の順調な増加につながったのだとうなずける。

 「さらには、当院で内視鏡検査を受けた患者様が、紹介元の医師に『検査は非常に楽でした』と感想を伝えてくださることで、また次の患者様の紹介につながるという良い循環が生まれるケースが多々あります。ありがたいことです」

 検査の結果、手術が必要な患者に対しては紹介元の医師と相談し、同医院からベストの病院を紹介するケースも少なくない。

 「手術が必要になった患者様の場合には、まず手術を行う病院や医師を紹介元の医師から紹介するか、我々から紹介するかを紹介元の医師に相談させてもらっています。そのうえで、我々から紹介をする際には、患者様に私が推薦する医療機関と医師の名前を記した一覧表をお渡ししてご検討いただき、できるだけご希望に沿えるようにしています。

 私は以前、関西にある大学病院の一般・消化器外科の助手をしていましたので、この地域で手術をしてくださる外科の先生方をよく知っています。それに加え、実際に当院から年間100名以上の患者様を紹介して胃がんや大腸がんなどの手術をしてもらっていますので、各医療機関とのパイプも太く、さまざまな状況を鑑みながら、患者様にとって最適な医師を紹介できると自負しています」

 地域の医療機関との密な連携は、患者にとっても、患者を紹介する医師にとっても、さらに信頼感が深まる大きな要因になっている。

内視鏡センター開設でより高い安全性を確保

 同医院での内視鏡検査開始当初から谷村先生が掲げてきた理想は、「安全で苦痛のない正確な内視鏡検査」。シンプルでわかりやすい言葉だが、内視鏡検査における、普遍的な課題でもある。しかし、内視鏡センターを開設するなどして、その理想に果敢に取り組み、検査のクオリティはさらに高まって、理想を達成できる日も近づいているようだ。

 「内視鏡検査でもっとも重要なのは安全管理です。センターを設立するまでの数年間、どうしたらより安全に、よりスムーズに検査ができ、患者様に快適に検査を受けていただけるのかを徹底的に考えながら、内視鏡センターの構想を練り上げました」

 ハード面では、常に看護師の目が届き、モニターをチェックしながら患者の全身管理ができるようナースステーションをフロアの中心に配置し、前処置室やトイレ、検査室、リカバリー室は回廊的にレイアウトした。介在感染予防のために、最新の内視鏡洗浄機も導入している。

 「そして、安全確保に欠かせないのはやはりチームワーク。現在、内視鏡の常勤医は私ひとりですが、非常勤医8名、内視鏡技師2名、看護師8名、医療秘書3名、技師助手3名でチームを組んで動いていますから、チーム医療を支えようという各々の意識がたいへん重要になります。今はそれが維持できていますが、これが緩んだときが怖いのです」

img4 同医院の内視鏡技師主任の吉峯みゆき氏は、同内視鏡センターのチーム医療についてこう語る。「谷村院長の理想がレベルの高いところにありますので、それぞれのスタッフがプロ意識を持って切磋琢磨し、その要求に応えられるよう日々努力しています。作業を分担すると、どうしても仕事のやり方が縦割りになりがちですが、安全確保のためにも横の連携は意識的に強くするよう日ごろから気を配っています」

 「プロ意識」という言葉が出たが、感染防止のために吉峯氏ら内視鏡技師の果たす役割はたいへん重大だ。同センターでは、消化器内視鏡技師会などで指導的な立場をめざす内視鏡技師により、日本消化器内視鏡学会のガイドラインを完全にクリアしたレベルの高い内視鏡の洗浄・消毒システムが実現されている。

 内視鏡の洗浄・消毒について言えば、日本初の取り組みとして、洗浄・消毒履歴管理ソフトを使って、その履歴をデータベース化。一人ひとりの患者に使用した内視鏡の番号や、洗浄者、洗浄器番号、消毒回転数、洗浄開始時間などのすべてが記録され、万が一の介在感染の発生に備えて万全が期されている。

 谷村先生は、安全確保のためにどこよりも力を入れている自信があると、繰り返し熱く語る。

 「これまで当センターで行った内視鏡検査は累計で3万8,000件を超えますが、その中で入院が必要になったケースは3件。手術になるような偶発症、重大合併症は0件です。もちろん介在感染は1件もありません。私は検査件数よりも、むしろ無事故で、安全が確保されていることを重要視している。これからも無事故を目標にしていきたいと思っています」

年々必要性を増す下部消化管内視鏡検査

 同センターの上部消化管内視鏡検査(以下、GF)と下部消化管内視鏡検査(以下、CF)の割合を日本の平均的な内視鏡センターのものと比較すると、CFの比率が高いのが特徴的だ。

 CFには医師の技量の差が表れやすいので、他施設で盲腸まで内視鏡が入らなかった人をはじめとして、谷村先生の腕を頼って集まる患者が多いことが主な理由だと推察されるが、それ以外に、大腸の検査のニーズ自体が上がってきている点も関係していると谷村先生は話す。

 「当センターでは毎日のように大腸腺腫の日帰り内視鏡手術を行っているのが現状。年々、大腸に悪性病変が見つかる確率が高くなっていると実感しています」

 大腸に限らず、定期的な内視鏡検査が早期がんの発見につながるのは明らかだ。谷村先生が取り組む内視鏡検査の敷居を低くする努力が、日本の医療へ及ぼす貢献度は大きい。

 


谷村外科胃腸科医院

所在地 〒665-0011 兵庫県宝塚市南口1-8-26TMSビル1F

TEL 0797-72-3992

診療科目 消化器科、乳腺科、外科、肛門科

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