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新医療 2007年 6月号

「1.5テスラMRI導入で変わるクリニックの画像診断」

 

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要旨:兵庫県宝塚市・阪急電鉄今津線宝塚南口駅前に立地する谷村外科胃腸科医院は消化器領域の専門性を生かした無床診療所である。理想と考える消化器診療を実現するため、01年に現在の施設を開設した。内視鏡センターと画像診断センターを併設し、年間7500件以上の内視鏡検査と最新鋭のモダリティを駆使した画像診断によるクオリティの高い診断と治療を提供している。内視鏡検査を軸に、消化器癌の早期発見、早期治療に力を注ぎ、MSCT、MRIなど補助診断に必要なモダリティをフルデジタルで運用する画像診断センターを活用している。

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谷村外科胃腸科医院 院長

谷村 雅一 先生

 

 

1.5テスラMRI導入の経緯

 03年6月に「EXCELART SPIN Edition」(東芝メディカルシステムズ社製)を導入した。

 機種選定の際、最も重視したのはMRCP(MR cholangio pancreatography)とパラレルイメージング技術である。パラレルイメージングは短時間で高画質が得られる技術で、検査時間の短縮が可能となり、画質の向上や検査数の増加、患者の負担軽減につながる。呼吸の影響のある消化器領域では特に重要な技術である。今でこそ一般的な技術であるが、当時はまだメーカー間の格差が大きく、選定の大きなポイントとなった。

 MRCPと並んで有用な画像を提供してくれるのが肝MRI(SPIO)である。

 MSCTとの併用により適切な治療方針の選択が可能になる。

 当院では年間約100例以上の胃癌、大腸癌が発見され、当院および関連施設で治療が行われる。術後の管理で断続的に検査を行うことが多いため、MRI導入は患者の医療被曝低減にも効果的である。

ERCPに代わる3D-MRCP

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 従来、胆・膵系の精密検査はERCP(内視鏡的逆行性胆管・膵管造影)であるが、非侵襲的で被曝のないMRCP検査は非常に有用であり、1.5テスラMRI導入の大きな理由でもあった。

 MRCP-3D撮像法では、ボリュームデータを収集することによってS/N比の高い連続した薄いスライスの画像が得られ、自在に3D処理を行える。

 特に、MRCPはERCPと比較して、次のような利点がある。

1. 術者の技量に左右されない

2. 完全閉塞部の両側の情報を得られる

3. 急性膵炎時にも施行できる

 MRCPによる閉塞性黄疸の病態把握や膵管・胆道合流形態の描出等は、胆・膵疾患診断上欠かすことができない。造影CT検査も重要な画像診断であるが、膵・胆管の描出能はMRCPには及ばない。そのため正確な診断には最新の技術を生かした3D-MRCPが必要であった。

 しかしMRCPは空間分解能に限界があり、拡張のない膵管の描出は難しい。そのため当院では、

1. 3D-MRCP

2. 2D-MRCP

3. T2強調冠状断像

4. T2強調横断像をルーチン検査とし、病変に応じて

5. T1強調横断像

6. 脂肪抑制T1・T2強調横断像

 を追加している。さらにMSCT検査も合わせて診断することで、見落としのない診療を行っている。

肝転移、SPIOが治療方針を変える

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造影CTでは描出できなかった微小な肝転移(矢印)もSPIOでは描出できる

 消化器癌の治療方針において、肝転移の有無と程度の把握は非常に重要である。肝転移の検出には超音波が有用だが、見落としをなくすためにCTやMRIを併用することが望ましい。

 当院ではMRIにおいて肝特異性造影剤であるSPIO(超常磁性酸化鉄:superparamagnetic iron oxide)造影検査を行っている。SPIO造影剤を用いるとKupffer細胞を持たない肝悪性腫瘍とのコントラストが明瞭となる検査方法であり、他のモダリティと比較しても、非侵襲的検査法の中で肝転移に対する最も優れた検出能を持ち、担癌区域の診断や個数診断に有用である。血管腫や嚢胞などの良性病変との鑑別、APshuntや脂肪肝でのfocal spared areaなど偽陽性病変の否定も可能であり、特異度に優れている。

 また本剤は投与後3分以内までは陰性造影剤と陽性造影剤の双方を併せ持つため、当院ではGRE系のT1強調画像におけるダイナミック検査を施行し、腫瘍の質的診断と存在診断を行っている。

 CTでも検出不能な微小な転移巣を明瞭に描出し、特に大腸癌・胃癌症例の術前スクリーニングと術後フォローアップには欠かせない検査である。

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運用面・経営面からみたMRI

 MRI検査数は現在月120件程度、その内、他施設からの紹介が約30%である。

 地域医療への貢献を目指し導入したが、この紹介率の高さから地域の医療機関の信頼が得られていると考えている。

 MRIやCTなど高額医療機器の導入には保守費などランニングコストを含め、多額の費用が必要で、機器のスペックを落とさずに、いかに費用を抑えるかも重要である。当院ではモダリティごとに選定を行ってきたが、ほとんどが東芝社製の機器である。結果論ではあるが、1社にまとめることでイニシャルランニングのコストを抑えることができた。それでも現在のMRI検査数では、採算が取れる程度で経営面でのメリットがあるとはいえないのが現状である。

 しかしMRI導入により画像診断センターの総検査件数は明らかに増加している。MRI導入前の画像診断センター年間総件数約3800件に対し、導入後は約6300件と1.6倍に増加している。

 これは、MRI導入によって質の高い診断と治療が身近に受けられるようになった相乗効果と考えている。

 当院では当初よりデジタルファイリングによる院内画像ネットワークを導入しているが、その最大のメリットは、検査後、被検者が診察室に戻った時点ですぐに画像を供覧しながら所見とその後の治療方針について、迅速に説明が行える点である。この迅速さこそがクリニックで画像診断を行う大きなメリットであり、被検者や地域の医療機関から信頼を得る要因だと考えている。

 

MRIの利用とこれからの病院運営の方向

 当院では、経験豊かな専門医と看護婦、内視鏡・放射線技師、その他全てのスタッフが協力し、最新の医療機器を駆使して患者様にやさしい先進医療を身近に提供し、これまでのクリニックではなしえなかった医療サービス環境を目指している。

 そのためには、ハード面の充実のみでなくスタッフ全員が常にアップデートを学ぶ姿勢が最も重要である。

 今後、MRI検査は放射線被曝のない利点を活かし、より低侵襲な方向へ進むと思われる。拡散強調画像(DWI法)の腹部領域での臨床応用や、FBI法をはじめとする非造影MRAが普及しつつあり、非造影検査に大きな期待を寄せている。


谷村雅一(たにむらまさかず)

57年兵庫県生まれ。

82年大阪医大卒。同年同大一般・消化器外科学教室入局。

85年姫路中央病院外科、

92年大阪医大助手、97年より現職。

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